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吉村靖孝 ビヘイヴィアとプロトコル

吉村靖孝 | ビヘイヴィアとプロトコル (現代建築家コンセプト・シリーズ)

吉村靖孝 | ビヘイヴィアとプロトコル (現代建築家コンセプト・シリーズ)

建築家の友人がtwitterで言及していたのでタイトルが気になって購入。タイトルだけ見ると何がなんだかよくわからないが、建築の中に存在する人と建築との細粒度な相互作用がビヘイヴィア、建築に対する外的な制約がプロトコル、ということらしい。

クリストファー・アレグザンダーのパタン・ランゲージの概念がソフトウェア生産性に対して大きな影響を与え、一方でネットワーク技術用語である(元々は外交用語らしいですが)「プロトコル」が建築家の発想に影響を与えている、というのは不思議な縁を感じます。

興味深い章も、「これは投げっぱなしジャーマンが過ぎるだろう」という章もありましたが、中でも、個人的*1に、「ローンとしての住宅」がいちばん興味深く読めました。自分なりに解釈すると、ローンはウォーターフォールであり、増築前提の小さな家はアジャイルあるいはイテレイティブな開発に相当する、と。

ただ、長期にわたるアジャイルな開発っていうのは、ハードウェアとソフトウェアの独立性がないと成立しづらいと思います。例えば、Nintendo DS用のゲームを開発していて、ちょっと3D性能足りないからといってVitaに移行する、というのはなかなか難しそう(ゲーム機で開発したことないから知らないけど)。アジャイルは、ハードウェアには余裕があるか、ハードウェアのアップグレードが簡単であるか、スケールアウト可能であるか、といった条件がないと成立しづらいのではないかなと。

ハード(土地や立地条件)がソフトウェア(上物)の限界を決定するので、いかにソフトウェアを柔軟に作ろうとしても、スモールスタート(狭小立地)では限界がすぐ来てしまうわけです。

ソフトウェアの世界では、この問題は仮想化により解決している場合が多いです。建築の場合は、賃貸にあたるような気もしますが、現状の賃貸はいわば「ブログ貸しASP」レベルのお仕着せ感があって、いまいちなのが残念。Amazon EC2のごとく、ローンによらない柔軟な生活スタイルと、カスタマイズされた環境を、*安価に* 実現できれば良いのに。

まずは己の物理的制約を仮想化しないとだめか。

*1:ローンが持つ硬直性に生活を支配されて困っている最中だから、ということもないのですが